「攻殻機動隊 新劇場版」を見に行った。
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上映前
シアターの入り口で係りのお姉さんに映画のチケットを渡すと、無言で大きな茶封筒を手渡された。
ん?なんだ?と思って中を見てみると、
デッサン画?みたいなのが3枚入っていた。「これ鉛筆で書いているやつ?値打ちのあるかも?!」と思って少し興奮したが残念ながらカラーコピーだった。というのも消しゴムで消してみたが消えなかったから。消すな消すなw
平日の朝っぱらということもあり閑散とした館内で、小脇に怪しげな茶封筒を抱えたオッサン同士がすれ違うのは妙に恥ずかしいものの、変なシンパシーを感じた。思わず軽く会釈しそうになるのをぐっとこらえたのはお互い様だったに違いない。
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予備知識ゼロ
この作品、実はARISEというシリーズものらしい。しかもシリーズ最終話。茶封筒を小脇に抱えたオッサンは皆それなりの風格があったので、予備知識なしで挑んでいたのはおそらく私ぐらいだろう。
物語冒頭に登場したクルツという、見るからに主人公素子のライバルなんだろうなっていうキャラが、「どっちが使い捨てにされるかすぐに分かるわよ、ふふふ。」という死亡フラグ確定台詞を吐いた直後にいきなり死ぬというそのフラグ回収の早さに度肝を抜かれたのは言うまでもないが、如何にも攻殻機動隊らしい複雑かつ入念に作りこまれたストーリーは何の予備知識もなく見に行った私には難解極まりなく、一体誰が何の為に何をしたいのかよく分からないままデッドエンドを迎えた。
ストーリー
物語の肝は、旧型の電脳が義体のバージョンアップに対応できないという大問題(デッドエンドと呼ばれる)の対応を巡る利権争い。
現実社会ではWindows xpのサポートが終了するってだけでも結構な社会問題になるんだから、義体を修理交換できなくなるなんて、旧型は死ねと言うのか!とどこかで聞いたことがあるような事態になるのは想像に難くない。
そこで総理は国家レベルでデッドエンド問題を回避する為に、ある企業と合意を交わそうとしていた。
しかしデッドエンド問題回避に関して政府と合意するということは次世代の義体規格決定権を一手に握ることになり、その利権はあまりにも大きい。その大きな利権を横取りしてやろうと如何にも悪そうなやつらが謀略を張り巡らせ・・っていう雰囲気の話。
登場人物が多い上、一気に、しかもさらっと登場してくれるので、誰がどの組織の人間なのか?よく分からないままスリリングに物語は進行する。
利権争いの裏で蠢く正体不明の第三勢力まで出てきて、話はさらに入り組んだ展開に。
501機関という何の説明もないまま、ご存じ俺たち的に登場した謎の組織は、実はこのシリーズに通して登場しており、以前、素子も所属していた組織であることが、上映後パンフレットを読んだ際に判明。
いちばんよく分からなかったのは、第三世界と呼ばれるデータの世界へと人類補完計画よろしく旅立って行った黒人っぽい双子?の少女たち。ものすごい意味ありげだった彼女らは素子の一体何なんなのさ。
これ以上、ストーリーを説明しても誰も得しないのでやめておく。
素晴らしい世界観
攻殻機動隊の原作が書かれたのは1989年。世間ではまだインターネットのイの字も聞いたことのない時代だ。
そんな時代に、脳内にデジタルデバイスを埋め込み、直接ネットワークに接続するなんていう発想を描いた士郎正宗という人は天才だと思う。
原作では電脳をネットワークに接続するには首の後ろにある差込口に端子をぶっ刺さないといけない仕様(有線オンリー)だったのかな?私の記憶が正しければ1989年にはコードレス電話はあったがwifiは無かった(そりゃそうだ)。電脳というぶっ飛んだ設定を思いつきはしたものの無線で超高速データ通信が出来るようになることは想定外だったのかも。
比較的新しい作品ではもちろんワイヤレスで電脳同士が直接チャットしたり、仮想空間にアクセス出来るという今風な仕様になっている。が、電脳化している人間の後頚部には相変わらず4つの穴があいており、どういった仕様なのか詳細は分からないが、有線でないと出来ないこともあるようだ。
本来なら全て無線で解決するはずだが、原作に敬意を表してあえて残しているのだろう。後頚部の4つの穴は電脳化の象徴だ。
あの穴に何かの機械をぶっ刺されたら気絶するらしいので、相当リスキーな仕様ではある。せめてカバーでも付いてりゃいいが全員、穴は剥き出しだ。
あなたもぜひ劇場へ!
この記事を読んで本作を見に行きたくなる人は居ないかも知れないが、もし見に行きたいという奇特な人は、このARISEシリーズのDVDを見て予習しておくことを強くお勧めする。
このARISEシリーズというのは素子が公安9課のメンバーとどのように出会ったのかが描かれている。らしい。つまり時系列で言うと原作より古い話ということになる。これまで語られていなかった素子の生い立ちにも触れており、見事に伏線が回収されている。らしい。
私が確信を持って言えるのは、映像のクオリティは超一流。これぞcool Japan。その世界観だけでも充分エンターテイメントだ。ってこと。あと、劇場に見に行けば、生のデッサン画風カラーコピーをもらえるかも知れない。ってこと。
正直、原作から全シリーズ通して見ているマニアが羨ましい。大人買いするか。