AI革命前夜

「WIRED AI 2015」で日本のAIの最先端に触れてきた話

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「WIRED AI 2015」で日本のAIの最先端に触れてきた話

 9月29日、東京は虎ノ門にて、日本(+外国人2人)の最先端のAI研究者が一堂に会する「WIRED AI 2015」が開催されました。

 私も大阪から遠路はるばるかけつけました。

 行きの夜行バスは地獄でしたが、とてつもない頭脳をお持ちの先生方の講演を聞くことができて、頑張って行った甲斐がありました。

WIRED AI 2015

 メンバーが凄いです。

  • 宇宙物理学者の松田卓也先生
  • シェフワトソンを開発した若き天才ラヴ・ヴァーシュニー
  • AGI(Artificial General Intelligence)の世界的権威であるベン・ゲーツェル
  • ドワンゴ人工知能研究所の山川宏さん
  • 人工知能研究センターの一杉裕志先生
  • 理研で生命科学を研究する上田泰己先生
  • Pezy Computing社の齊藤元章さん
  • 人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)」の著者である松尾豊先生

 などなど超豪華メンバーによる共演は、非常にエキサイティングであっと言う間の6時間でした。

 以下、登壇した先生方の紹介と講演内容について簡単に。

松田卓也先生

 トップバッターで登壇した松田卓也先生。

matsuda

 今回のAIサミットが実現したのは松田先生のお力によるところが大きいそうです。

 松田先生は1960年代から宇宙物理を研究しているそうなんですが、風貌はただのオモロいおっちゃんって感じでしたw

 トークも面白く、人間的魅力にも溢れ、これだけの豪華メンバーが集まってくるのも頷けます。

 もちろん松田先生はただの面白いおっちゃんじゃありません。専門の宇宙物理学だけでなく人工知能研究にも深い造詣があり、壇上では「シンギュラリティへといたる道」と題して、人工知能の未来について語っておられました。

 松田先生いわく、18世紀に起こった産業革命に乗じて大きな発展を遂げたのが欧州の強国とアメリカ。そして極東の日本もその波にかろうじて乗ることができた。一方その波に乗れなかった超大国が中国だったと。

 そしてこれこら、人工知能技術の普及による第2の産業革命が起きるが、今のところはアメリカのGoogle、Amazon、Facebook、中国のBaiduなどがこの業界をリードしており、このままでは日本企業は負ける。と日本最高のAI研究者を目の前に言い切っておりました。さすが松田先生です。(笑)

 「しかし、日本にはすごい人がいる!」と松田先生が紹介したのが、この後登壇する予定のPazy Computingの斉藤元章さん

 Pazy Computingは齊藤さんが立ち上げた、プロセッサー(CPU)を作る会社だそうで、後で改めて説明しますがとてつもないパワーを持つプロセッサーを開発しているそうです。

 松田先生は、「ハードウェアは齊藤さんが作るそうだから、若い人たちはソフトウェアを頑張って作りなさい!」と会場に集まった学生たちに発破をかけていました。

ラヴ・ヴァーシュニー

 シェフワトソンって知ってますか?

 ラブ・ヴァーシュニーさんが作った人工知能を使った料理レシピ考案webアプリケーションです。

 使いたい食材を選択すると、その食材を使ったレシピを人工知能が考案してくれます。

 ただしクックパッドとは違います。

 既にある料理の中から選択するのではなく、文字通りオリジナルの料理を提案してくれるんです。

 人間には思いつかないような、それでいて味も良く見た目も美しい料理を提案してくれるそうなので、興味ある人は試してみて下さい。無料で出来ます!

IBM-Chef-Watson
IBM Chef Watson

 膨大な世界中の美味しい料理の成分等を解析することで、美味しい料理の本質、いい匂いの条件、見栄えの良さなんかを人工知能に理解させたんですね。

 結果的に人工知能は、今まで誰も思いつかなかったような料理を考案出来るようになったとのことです。

 機械にとって苦手な分野だった創造性を実現したわけです。

 個人的には料理とかしないのでこのアプリケーション自体はあまり興味ないのですが(ごめん)、想像性という人間ならではと思われていた能力をコンピュータに実装することが出来たこと、そしてそれ以上に、脳が持つ創造性とは何か?という大きな謎を解き明かすヒントを示したというのが非常に興味深いところです。

参考人工知能は料理の夢を見る:シェフ・ワトソンをつくった若き天才と未来の「創造性」#wiredai « WIRED.jp

ベン・ゲーツェル

 ジョンレノンを思わせるちょっとヒッピーな風貌のベン・ゲーツェル博士。

ben

 彼は身振り手振りも交えた非常にエキサイティングな話し方をします。

 残念なことに私は英語がイミフなので、彼の言っている言葉を直接聞くことはできず、同時通訳のイヤホンから流れる冷静沈着な通訳女性の声に頼らざるをえませんでした。

 残念無念です。

 しかしそれでも、彼の表情や身振りから、その大きな野望へ向かう熱い心意気は十分に伝わってきました。

 彼の大きな野望とは、いわゆるAIとは区別する形で、
AGI
(Artificial General Intelligence)と呼ばれている汎用型の人工知能を作ることです。その為に彼は世界を飛び回っているそうです。

 彼は全てをオープンソース化することで、ややもすれば世界を征服することになるかも知れないAGI技術を、どこかの国や企業に独占させることなく、人類全体の幸福のためにその技術を生かしたいという強い意志を持った素晴らしい科学者です。

 人工知能のLinuxを目指す!と言っていたのが印象的でした。

 多くの企業が自社の利益の為にAI技術の開発競争に乗り出す中、見返りを求めないどころか全てを与えてしまおうというベン・ゲーツェルさんの熱いハートに感銘を受けました。

 もちろん彼は単なる理想主義者というわけではなく、とてつもなく頭のキレる天才です。

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 トイザラスで買ったおもちゃのロボットに、アインシュタインの顔を付けて、人工知能にしゃべらせて遊んでいる研究しているそうです。めちゃ楽しそうでした。

 今後ますますの活躍を期待しています!

山川宏

 ドワンゴ人工知能研究所の所長を務める山川さん。

 めちゃくちゃ賢い人だと思いますか、見た目、もの凄い普通の人っぽくて大好きです。(笑)

 人工知能、神経科学、認知科学の領域を横断し、全脳アーキテクチャの実装を目指す「全脳アーキテクチャ -whole brain architecture-」という学会?みたいなのを立ち上げて、こちらもベン・ゲーツェルさんと同じく如何にAGIを人類全体の利益とすることが出来るか?という非常にオープンな活動をしていらっしゃいます。

 ちなみに私もなぜか全脳アーキテクチャのFacebookメンバーに入ってます。オープンな証拠です。(笑)

 講演では、その全脳アーキテクチャの活動についてや、汎用的人工知能(AGI)の完成を目指す思いを語っていらっしゃいました。

 汎用的人工知能(AGI)は、特化型AIを積み上げていくのではなく、汎用的な認知能力と学習能力を備えたAIを作って、それを教育、学習させることでこそ完成するという彼の持論には非常に共感します。

 今、世間に出回っている人工知能と呼ばれているもの(サービス)は全て特化型人工知能と言えます。

 まだまだAGIは未知の領域ですが、川上さんを中心とした研究グループのご活躍に期待してます。

 まあ私も一応会員なので、私に出来ることがあれば何なりとおっしゃって下さい。(笑)

一杉裕志先生

 産業技術総合研究所 人工知能研究センターの一杉裕志先生。

 一杉先生が押し進めているのは、脳をリバースエンジニアリングすることで、脳機能をコンピューター上で再現してしまおうという研究。

 汎用的な認知力や理解力、それに意識も感情も創造性も、人工的に作ろうと思えば途方もないことに思えますが、面白いことにその全てを備えた見本を皆、持ってますよね。

 脳です。

 その脳の構造をニューロンレベルで模したコンピュータを作ってしまえば脳機能は全て再現出来るはずだというのがリバースエンジニアリングの考え方。

 個別のニューロン自体は、単に電気的なやりとりをしているだけ(まさにコンピューターと同じ)です。

 脳内に1000億個程度あると言われるニューロンどうしの連結構造を全て解析し、それを全て再現できるコンピューターチップを作ることか出来れば理論上は再現可能です。

 1000億個のニューロンと聞けばとんでもない量ですが、一杉先生によると、その構造自体は意外と単純だそうです。マシンスペックさえそれなりにあれば、再現できるはずだと。

ichisugi

 そして、一杉先生は、リバースエンジニアリングが成功すれば、当然そこに意識と呼べるものが生まれるはずだとおっしゃいます。

 ただ一杉先生は「意識なんてのは脳が活動する際に付随して生まれるだけであって大したモノじゃない。その機能にこそ注目するべきだ。」と、この世で唯一無二の存在である自意識というものの神秘性をバッサリ斬っておられました。

 デカルトが認めた唯一絶対の存在である自意識も、一杉先生にとっては取るに足らんもののようです。

 そう遠くない未来に、1000億個のニューロンを再現出来るスペックを持つマシンが登場するのは間違いないはずです。

 果たして、そこに意識と呼べるものが生まれるのか?機械に自我が生まれるのか?一杉先生の研究に大注目です。

上田泰己先生

 「STAP細胞はありまぁす」で有名な理化学研究所所属の上田泰己先生。

 彼の専門は生命科学。

 先日、マウスを透明化することに成功したそうで、目的の臓器等を着色しさえすれば切らずに体の中を観察することが出来るようになったとのこと。

 ついに我々人類(雄)の永年の夢である透明人間への道を・・って、上田先生のお話はそんなゲスい方向へ発展しなかったので誤解なきよう。

 透明化技術だけでなく、ミクロな細胞レベルでの観察技術は相当高まっているようで、ニューロンの電気信号が脳内でどのように広がっているのか?をリアルタイムで観察できるそうです。

 一昔前までは科学の対象たりえなかった脳についての研究が、これから一気に進む可能性があります。

 ちょっと余談になりますが、最後に先生方が壇上に揃って上がった際に、上田先生と松田先生が面白いお話をしておられました。

 どんな流れか忘れましたが、上田先生が「脳の研究は一番面白いです。」とおっしゃった際に、宇宙物理学者の松田先生が「いや、宇宙の方が面白い!」と冗談とも本気とも取れる発言をして会場が沸いたのですが、上田先生は負けずに「いやいや脳の方が面白いです!松田先生も宇宙物理学者である前にヒトなんですから!」と切り返していました。

 僕の中では拍手喝采でした。

 我々は脳を使って外界を認識しています。すなわち、この世界は脳の中に広がっていると言っても過言ではないんです。宇宙は脳の中にあるんです!

 宇宙の研究も謎に満ちており刺激的だとは思いますが、その宇宙を認識し解明しようとしている脳自体の方が深いテーマに決まってます!

 個人的意見です。(笑)

 あと、これも私の持論なのですが、自意識は0、この世界(宇宙)の果ては∞、0から∞の間がこの世界であり、自意識と世界の果ては、この世界の両極であり、自意識は世界の中心である。

 なんて哲学的なことを思ったりします。

 「世界の中心で愛を叫ぶ」ってのは「自分の心の中で愛を叫ぶ」って意味なのか?違うのか?それは知りませんが。(笑)

 0(自意識の謎)と、∞(宇宙の謎)、人類は一体どちらに先に到達するのでしょうか?

 と、余談が過ぎましたw

一杉先生×上田先生

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 一杉先生と上田先生による対談なんかもありました。

 生体の脳を解析する上田先生と、それをマシン上に再構築する一杉先生という脳のリバースエンジニアリングの成否を握るお二方、まさに夢の共演です!

 何も知らない人が見たら普通のおじさんが二人でしゃべってるだけにしか見えないと思いますが。(笑)

齊藤元章さん

 このサミットに登壇した先生方はすごい人ばかりでしたが、その中でも一際天才的な頭脳を感じさせる齊藤元章さん。

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小っちゃくてごめんなさい。。

 彼は元々医師として臨床現場に居ながら、画像診断用の医療機器をばらしてその仕組みを研究し、医療機器ベンチャーを立ち上げて超高性能な画像診断機器を作り上げたそうです。

 その医療機器メーカーを大成功させた後、その会社を退いて、今度はCPUの開発をしはじめたそうです。もう訳が分かりません。

 現在はPezy Computing社で超広帯域3次元積層メモリというのを開発しているそうです。

 コンピュータの計算能力が1年で2倍になるというムーアの法則は、トランジスタの超極小化にともないそろそろ限界説が囁かれていてるそうですが、超広帯域3次元積層メモリという技術は、その限界を突破するらしいです。

 技術的なことは素人にはさっぱり分かりませんでしたが、これまで2次元的だった集積回路を重ね合わせることで3次元の超極小回路を作るそうです。2×2が、2×2×2になることで限界をふっ飛ばします。

 ムーアの法則どころか、齊藤の法則は1年に4倍ぐらいかも知れません。

 もう少しで、人間の脳サイズのコンピュータに、1000億個のニューロンに相当するマイクロチップを詰め込むことも可能だと齊藤さんは言っています。

 それどころか5~10年後には、6リットルサイズの中に73億人分の人間の脳に匹敵する集積回路を収めるそうです!

 とてつもない話です。まさにシンギュラリティです。

 にわかには信じがたいですが、これまで不可能を可能にしてきた齊藤さんが言うのだから、本当に出来るかも知れません。

 齊藤さんは、その超人間レベルの人工知能を正しく使えば、全ての人類はお金を稼ぐための労働から解放され、そもそもお金という存在が無意味となり全く新しい世界に移り変わると言います。そして、医学の発達も加速し人類の寿命は急激に伸び、新人類と呼ぶにふさわしい存在になると。

 人類の歴史の転換点を私たちは見届けることになるのかも知れません。

 もし私達が、その力を巡って争いを起こしてしまうようなバカばかりなら、人類の歴史はそこで終わることになるでしょう。

 いずれにせよ、今後数十年は人類史を左右する時代となるはずです。

松尾豊先生

 松尾先生は、特化型人工知能のことを大人の人工知能、汎用型人工知能のことをこどもの人工知能という言葉で表現しておられました。

 簡単な言葉でその本質を表現する松尾先生らしい言葉のチョイスだと感じました。

 上述したシェフワトソンや、チェスや将棋をさす人工知能、テキストデータを自動解析するような人工知能などのように、何らかの専門家の代わりをするのが、大人の人工知能です。

 要は何らかの狭い枠の中で最適解を見つけることに特化した人工知能が大人の人工知能です。

 一方、こどもの人工知能とは、Googleの猫が有名ですが、猫を見てそれが猫だと判断するような人間にとっては子どもにでも出来る当たり前の機能です。

 手書き文字の認識なんかもそうです。よくスパム排除の為に、読みにくい文字を読み取って入力させたりしますね。

 機械にはあの歪んだり余計な線が入ったような字を読み取るのが難しいわけです(だからこそスパム排除として使える)。

 それが出来るのがこどもの人工知能です。枠組みが緩く、より汎用性の高い機能です。

 普通に考えると、専門性の高い機能の方が高度なことをやっていそうですが、実は字を読んだり絵を認識したりと言った人間にとっては簡単な機能を実現する方が、圧倒的に難しいことです。

 それが最近のディープラーニング技術の発達によってだんだん出来るようになってきました。

 松尾先生は子どもの人工知能技術こそが日本が世界に勝てる唯一のチャンスだとおっしゃってます。

 今、人工知能業界で世界をリードしている企業が実用化しているのは、全て大人の人工知能です。

 大人の人工知能を作るにはビッグデータが肝です。ビッグデータの収集に関しては日本の企業では、Google、Amazon、Facebookにどうあがいても勝てません。

 一方のこどもの人工知能は、根本的にアプローチ方法が違います。人間が大量のデータを詰め込むのではなく、機械が自ら状況を認識し、試行錯誤しながら目標を達成する方法を学習していきます。

 まるで人間の赤ん坊のように。

 松尾先生の話では、もう技術的にはかなりのところまで来ているそうです。

 今まではどうしても自動化するのが難しかった作業でも、機械が自ら学習することで、その作業をこなせるようになるであろう分野がたくさんあるそうです。

 日本が元々得意だったものづくりと子どもの人工知能は非常に相性がいいと言えます。

 今、世界の人工知能技術はほぼ広告業へと向けられていますが、潜在的なマーケットは間違いなく製造業の方が大きい。そこに日本の人工知能技術が深く入り込むことが出来れば、made in Japanの人工知能が世界を席巻するかも知れない。

 松尾先生は、そんなシナリオを思い描いているそうです。

 研究者と企業と政府が一致団結して、日本の技術力を世界に発信していってもらいたいところです。

若林さん

 最後になりましたが、Wired編集長の編集長、若林さん!

 今回は素晴らしいサミットを企画していただき、ありがとうございました。

 若林さんの全く飾らない司会進行ぶりには思わず笑ってしまいました。とても緩くていい空気感でした。(笑)

 プログラムの最後に、先生方への質問コーナーがありましたよね。事前に質問を募集してその中から若林さんがピックアップして先生方に聞いてくれるっていう。

 その最後の質問、たぶん僕が書いたやつだと思う。(笑)

まとめ

 というわけで、楽しい一日でした。

 先生方、これからも研究活動、頑張ってください!

 若い学生さんたちも頑張って勉強して下さい!

 人類に幸あれ!

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