AI革命前夜

「時間」とは何か? 「今」とは何か?

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「時間」とは何か? 「今」とは何か?

「今」と言う一瞬

博士
おい、今、何時だ?
助手
6時っす!
博士
もっと正確にだ。
助手
め、めんど臭いっすね。。5時58分っす!
博士
もっとだ。
助手
も、もっと?5時58分36秒っす。いや37秒、って何すかこれw
博士
「今」とは何だと思う?
助手
へ?「今」は・・、「今」っすよ。
博士
「今」と言った瞬間にその「今」は過ぎ去ってしまう。
助手
そ、そうっすね。「い」と「ま」の間にも時間は流れてますもんね。
博士
過ぎ去った「今」は「過去」と呼ばれ、これから来る「今」は「未来」と呼ばれる。時間の流れというのは「今」の連続だ。「今」は決して捕まえることが出来ない一瞬だ。
助手
は、はぁ。
博士
今日は時間の流れと「今」について語ろうと思う。

時間とは何か

 私たちが普段から当たり前に感じている時間というもの。実はこれには非常に謎が多い。

 「時間」は昔から哲学者、科学者を悩ませてきた大きな謎の一つだ。

 まずは簡単に「時間」の歴史を振り返ろう。

天体の周期

 太古の昔、時間とは天体の動きそのものだった。

 太陽が東の地平線より現れて一日の始まりを知らせ、しばらく大地を明るく照らした後、西の地平線へと沈んで一日の終わりを告げる。

 当時の人々は自然と、太陽の周期的な動きを1日という一つの単位として扱うようになった。

 天体の動きをさらに詳しく観察することで、1年という大きな周期があることにも気づいた。

 太陽が作る影が時間の目安となることに気づいた人々は、オベリスクと呼ばれる高い石碑を建てた。いわゆる日時計だ。

 当時は、一日を、明るい昼と暗い夜に分けて、それぞれを12等分することで1時間という区切りを使っていたという。

 季節によって日照時間には差がある為、当時の人々にとって「1時間の長さ」は季節によって伸び縮みするものだった。
 

振り子の等時性

 話は飛んで16世紀後半、当時18歳の青年だったガリレオ・ガリレイは大聖堂の天井から吊り下げられたランプの揺れを見つめるうちに、振り子の等時性という法則に気が付いたと言われている。

 振り子の等時性とは、
振り子の周期(1往復に要する時間)は、振り子の長さだけに依存し、振り子の揺れの大きさや重さには依存しない。
という法則。

 つまり、大きく揺れている時は速く揺れ、小さく揺れている時はゆっくり揺れることで、結局、振り子はどんな揺れ方をしようとも一周するのに全く同じ時間を要するということだ。

 このガリレオの大発見のおかげで後に振り子時計が完成することになる。

 天体の周期性に頼ることなく、自分たちで周期性のある装置を作り出すことに成功したのである。

 「1時間の長さ」を正確に1日の24等分と定めた時計は、もちろん1年中、同じ「1時間の長さ」を刻み続ける。

 太陽やその他の天体の動きそのものが時間であったのが、逆に、時計の針という基準によって太陽の動きを計ることが可能になったのだ。

 まさに世界は180度ひっくり返った。

 ガリレオは何かとひっくり返すのが得意だったようだ。

 人が当たり前に感じている価値観をひっくり返すことが出来る、稀代の天才の一人だ。

絶対時間

 17世紀後半、アイザック・ニュートンは著作「プリンキピア」の中で一歩進んだ時間の概念をとなえた。

 絶対時間という考え方である。

絶対的な、真の、数学的な時間は、それ自身で、そのものの本性から、外界のなにものとも関係なく、均一に流れ、別名をドウラチオ(持続)と言う
『プリンキピア』I・ニュートン著

 ニュートンは、物体があろうとなかろうと、運動していようとしていまいと、そうしたこととは無関係に、宇宙には端から端まで一様に、無限の過去から無限の未来へと、ただひたすら一定のテンポで、時間は流れ続けると考えたのである。

 言うなれば絶対時計を想定したようなものだ。

 地球のどこに居ようとも、宇宙のどこに居ようとも、真実の現在時刻はその絶対時計の針が示している。

 この絶対時計は決して狂うことはない。止まることもない。この絶対時計の針の動きこそが時間そのものである。と。
 

 この絶対時間、そして絶対空間という宇宙全体の背景として固定された座標系を想定した上で、ニュートンは偉業を成し遂げる。

 リンゴの落下から惑星の運動にまで適用される「ニュートン力学」の完成である。

 この偉業のおかげで、ニュートンの考えは人々の新常識として定着することになる。

伸び縮みする時間

 「宇宙の端から端まで一様に時間が流れている」という絶対時間感覚は、現代人にとってはごく普通の感覚と言えるだろう。

 しかし、この感覚は実は正しいとは言えない。

 現代を生きる我々でさえ正しいと感じているニュートンの世界観は、天才アインシュタインの常人離れした思考の前に崩れ去ることになる。

 19世紀初頭、この世を支配する運動法則と信じられていたニュートン力学を、アインシュタインは根底から作り直すことに成功した。

 「相対性理論」である。

 その理論は、ニュートンが想定した絶対時間、絶対空間を真っ向から否定する。

 アインシュタインは、三次元空間と一次元の時間を合わせて、この宇宙を四次元時空と表現し、時空は、単なる枠でも座標でもなく、それ自身が縮んだり曲がったりするものであり、物理学の対象物となりえることを説いた。
 

 楽しいことをしていると時間が過ぎるのが早く感じる。

 というのは事実だが、残念ながらそれはここで言う時間の伸び縮みとは一切関係ない。

 アインシュタインが「時間」について言ったのは、
「運動している物体は時間の流れが遅くなる。」
「強い重力を受ける程、時間の流れは遅くなる。」
というものだ。

 まるで浦島太郎だ。日本の童話はすごい。竜宮城は地表よりも相当強い重力がかかっていたのだろう。

 運動している物体の時間が遅れると言っても、走ったり新幹線に乗ったりするぐらいの速度ではその時間の遅れは限りなくゼロに近い。いやゼロと言ってもいい。

 計測出来るレベルで時間の遅れが現れるのは、もっと速い速度で移動した際の話だ。

 光速(秒速約30万km)に近づけば近づくほど、その物体に流れる時間は遅くなる。理論上、光速で移動している物体には時間は流れない。

 「時間が遅れる」と言っても遅れている本人にとっては全く普通である。

 遅れていない側から、遅れている側を見た際には多少スローモーションに見えることだろう。もちろんもし見えたらの話だ。

 なかなか普通の感覚では想像しがたく、信じがたいとは思う。

 だが、現にGPS技術などはその時間の遅れを計算することで成り立っていることからも、その正しさはもはや疑いようがない。

  要は、時間というのは絶対的な存在ではなく、観測者それぞれにとって相対的なものである。というのが「相対性理論」の一つの結論である。

時間の始まりと終わり

 1948年には、相対性理論を使って導き出された、宇宙に関する衝撃的なセオリーがジョージ・ガモフによって発表される。

 「ビッグバン宇宙論」である。

 宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発によって始まったと言う説だ。

 大爆発と言っても、我々が目にしたことがあるような爆発ではない。

 我々が見ているのは空間の中で何らかの可燃物が爆発しているものだが、ビッグバンとは空間自体が誕生する瞬間である。

 超高温、超高密度な極小の一点が、急激に膨張し冷やされることで、今の宇宙になったと言う。

 意味が分からない?心配ない、誰も正確にイメージすることは出来ない。

 とにかくこの説によると、宇宙は無限の過去から存在しているのではなく、始まりがあったのだ。

 宇宙の始まりとは、すなわち時空の始まり。

 時間の始まり。

 始まってしまった以上は、終わりもあると言われている。最終的に宇宙は元の一点に凝縮され、ビッグクランチと呼ばれる最後を迎えるそうだ。

 時間が終わる。

 何も無く時間も流れない世界。とても我々には想像出来ない。

 もちろんこれらは、数学的計算によって導き出された理論上ものであって、本当にそうなるのか?本当にそうだったのか?誰も確かめることはできない。

 今もなお、時間の謎、宇宙の謎への探求は続いている。
 

 というような「時間」を巡る歴史があるわけだが、実は今日話したいのはそんなことではない。

「今」と「意識」

 絶対的であれ、相対的であれ、時間は流れている。

 始まりと終わりがあろうとも、伸び縮みしようとも、我々は間違いなく時間の流れを感じている。

 そして、「今」を感じている。

 「今」という特異点に関しては、アインシュタインもお手上げだったと言われている。科学的に「今」を扱うことは非常に難しい。

 「今」の存在は、実は我々の意識に深く関わっている。

 意識のないところに「今」は無い。

 「今」という瞬間は、客観的には存在しえない。

 「今」は主観そのものと言える。

 脳細胞の活動が「今」という瞬間を生み出し、「今」を感じている主体を私たちは「意識」と呼ぶ。

「今」のない時間

 もしあなたの命が途絶えれば、あなたの「今」は消えてなくなる。

 時間は流れても、そこにあなたの「今」はもうない。

 別に命が途絶えなくとも、意識を失っただけでも、あるいは眠りに落ちただけで、あなたの「今」は消える。

 そういう意味では、夢を見ている時は、わずかながら意識があると言える。夢の中であなたは「今」を感じているはずだ。
 

 もし、この世界に、意識と呼ばれる現象が存在しなければ、「今」を認識する主体が存在しないということになる。

 世界から「今」が消えてなくなる。

 「今」が無い状態を想像できるだろうか?

 「今」のない時間の流れを、あなたは想像できるだろうか?

 決して想像できないはずだ。「今」が無ければ時間は流れない。

 時間の流れは観察者がいてこそ感じられるのであって、観察者がいなければそこに流れは無い。

 つまり、「今」が主観であるように、実は「時間の流れ」そのものが主観なのだ。

 客観的な「時間の流れ」は、原理上、その存在を証明することは絶対に出来ない。

流れない時間

 「今」を生きる我々は、空間は自由に移動できても、時間は決して取り戻せない。

 空間と時間が同質のものとはとても思えない。

 しかし、事実はそうではない。

 そもそも時間は流れているのではない。

 本当は、時間も、空間と同じようにただ広がっているだけなのだ。

 端はあっても、それは始まりでも終わりでもない。

 方向性ですらそれは相対的なものであり、どちらが前でどちらが後ろというものではない。

 まさに4番目の次元として、3次元空間と直行した方向に広がっているだけなのだ。

 もちろん、この感覚は我々には理解できない。

 四次元時空を真に理解するには「今」を超越した神の視点が必要だ。

神の視点

 神の視点に「今」はない。

 神の視点から見れば、この宇宙はただそこにあるだけで、始まりもなければ終わりもない。

 単に、互いに垂直な4つの方向に広がりを持つ空間である。

 いや空間という表現は正しくない。

 線という表現が一次元であるように、面という表現が二次元であるように、空間という表現は三次元的な広がりを表すにすぎない。

 4番目の方向へも広がりを持つそれは、我々には認識できないし、もちろんそれを的確に表現する言葉もない。「超空間」などと言うしかない。

 神の視点から見た超空間には、宇宙の全てが詰まっている。

 我々の認識で言う、始まりから終わりまで全てがそこに在る。

 細かいことを言うなら、地球の誕生も、人類の未来も、あなたの人生も、全てがそこに在る。

 全ては既に、在る。

それでも「今」は流れ続ける

 我々は「今」の呪縛から決して逃れることは出来ない。

 例えタイムマシーンで過去に戻ったとしても、そこはやはり自分にとっては「今」でしかないように。

 この宇宙が、この四次元時空が、どんな形で存在していようと、我々に見えるのは「今」だけだ。

 残念ながら三次元空間に直行する第四の方向は我々には見えない。未来の方向を指さすことは出来ない。

 我々は「今」を生きるしかない。

 自分の「今」が終わるまで。
 
 

追記ブログで時間の謎に関する持論を語ったら物理学者と微妙に被ってた話

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コメント

  • 興味深いテーマをご説明頂き有難うございます。人間を含めて動物の疾病の発病機構(病理)を追求していきますと、進化の過程、言い換えますと時間軸の存在を前提としたEvolutional Medicine& Biologyという概念で、進化に伴ない獲得した病気、例えば肥満、癌などを説明しようとする流れがあります。癌の多くは加齢に伴なう遺伝子のほころびによって生ずるといわれますが、反面、遺伝子そのものも、活動しているものが少数で、進化の過程で大半がガラクタとなっている、と言われます。また、植物と動物の寿命の違い、動物種の寿命の違い、そして動物の寿命を人間の寿命に換算することの矛盾、など生物を探求して行くと時間の存在を土台としており、これが果たして正しいのか否かとさえ疑問に思えます。3日前のe-テレで、道元禪師を取り上げた番組のなかで、禅師が時間の通俗的な過去、現在、未来という概念を否定していたことに興味を覚えました。今、70歳を迎えようとしていますが、病のメカニズム追求をすればするほど、未知の部分が多くなり、わからないことが解った、とても手におえるものではなかった、と今は感じています。無限、絶対の世界(それすらあるのか否か?)を時間という点で、つくずく考えさせられました。所詮、地球一個の上で、人間のみの視点で争っていることが愚かなのでしょう。勤労感謝の日に、いい勉強をさせていただきました。有難うございます。今後のご健勝とご活躍を願っております。

    及川正明拝

    by 及川正明 2016年11月23日 12:02 PM

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