AI革命前夜

【人工知能と人工意識】 人工意識は何を思う?

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 人工知能と人工意識、よく似ていますが違うものです。

 その辺のお話。

人工知能とは

 人工知能とは、なんらかの目的を達成する際に知的に振る舞う人工物(コンピュータ)を言います。

 「知的に振る舞う」という言い方はなんともあいまいで抽象的な感じがしますが、そもそも知能というものは非常に汎用的かつ抽象的なものなので、具体的な言葉では定義しづらいものです。

 無理やり知能の定義を言葉にするなら、「ある現象に関する因果関係を把握、理解し、それを基に状況判断したり、未来を推測したり、応用できたりする能力」みたいな感じでしょうか?

 非常に抽象的で分かりにくいと思います。

 とにかく知能というのは、知的な判断を下すその能力のことであり、まるで人間のように知的な判断を下すことができるコンピュータを人工知能と呼んでいます。

 しかしながら、実は私たちが持つ知能のメカニズムはよく分かっていません。

 なぜ、私たちは高いところにある物を取る為に長い棒を使えばいいということに簡単に気づくことが出来るのか?その仕組みは謎に包まれています。

 メカニズムがよく分かっていない以上、模倣する対象はあくまでその現象的な部分であって、仕組みそのものではありません。

 人工知能の研究は意外にも古く、1950年代ぐらいからコンピュータに疑似知能を持たせる為に様々な試行錯誤が繰り返されてきたそうです。

 探索木のアルゴリズムでコンピュータの計算力に物を言わせて、知能を実現しようとした時代もありました。コンピュータの計算速度なら手当たり次第に計算すれば最適解を見つけることができるはずだと。

 しかしいくらコンピュータの計算速度が速くなろうとも、計算速度で遥かに劣っているはずの天然知能が持つ閃きには勝てません。

 高いところの物を取る為に長い棒を使うアイデアが閃くのは、単純な計算速度の問題ではないわけです。

 長らくの間、様々なアルゴリズムが考案されながらも、なかなか本物の知能に近づくことはできませんでした。

 しかし2010年代に入り、ついに大きなブレイクスルーが起こりました。ディープラーニングの登場です。

参考人工知能・ディープラーニングについて知りたい人にお薦めの本

 ディープラーニングというのは、ニューラルネットワークという昔からあった計算モデルを多層化したものです。

 ディープラーニングのアルゴリズムは実際の脳の構造に非常によく似ており、機能的にも実際の脳内での処理を思わせる成果も出ています(画像を見せただけで勝手に猫の顔を見分けられるようになるなど)。

 ディープラーニングのすごいところは、なぜコンピュータがそのような知的な判断を下すことができたのか?その過程が見えないところです。そのコンピュータを作った人にも!

 あまりにも計算が複雑すぎてなぜそうなるのか分からないが、出てくる答えは驚くほどに知的なものなのです。

 まさに人間の知能のようです。

 今後、脳の研究が進むことで知能のアルゴリズムを解明することができれば、その本物のアルゴリズムを取り入れることで、人工知能はさらに賢く、さらに汎用的になるはずです。

参考ホーキンスが唱える知能のアルゴリズム「自己連想記憶理論」

人工意識とは

 人工意識とはどんなものでしょうか?

 人工知能に意識は必要ありません。意識がなくても知的な判断をすることは可能だと言えます。

 ここで言う「意識」とは自分が自分であることを認識している主体そのもののことです。

 人工知能と呼べるものは今でも既に存在しますし、今後ますます増えていくと思いますが、人工意識に関してはまだSF映画の中だけです。

 果たして人工物に意識が宿るのか?

 これまで多くの自然界の謎を解き明かして来た現代科学を以ってしても、つい最近まで「意識」に関しては科学の対象として扱うことさえ難しい存在でした。

 哲学者のチャーマーズは、「赤いものを見てそれが赤いと判断する仕組み」と、「その赤さ(クオリア)を感じる意識的体験が発生する仕組み」は全く別物であり、前者は比較的モデル化しやすいイージープロブレム、後者は物理的なモデル化が困難なハードプロブレムとして区別しました。

 感覚器官からの様々な入力を受け取り、処理し、出力する。

 脳が行っているのはたったそれだけです。

 いくら脳を切り刻んでも、魂の玉座は見つからず、ただとてつもない量のニューロンが複雑に絡みあい、ただ電気信号をやり取りしあっているだけ。

 なぜそこに意識的体験が付随するのか?一体どういうメカニズムでそこに「私」が立ち現れるのか?

 その「意識」の謎を解き明かさんとする理論として今、注目を集めているのが、ジュリオ・トノーニが唱える統合情報理論(IIT)です。

 脳を生きたまま観察・解析する技術がどんどん高度化され、トノーニはついに意識の存在を客観的に観察することに成功したそうです。

 それまで客観的には決して見極めることのできなかった、意識と無意識の境目を捉えたのです。

 トノーニは、意識とは多様な情報を統合するシステムにより生まれるもので、人間の脳はまさに多様な情報を統合しうるシステムであること、そして睡眠時や脳に何らかの障害を負った状態では十分に情報を統合しえないことにより意識が消えてしまうこと、コンピュータがいくら多くの情報を蓄えようとも、それらの情報は決して統合されているとは言えず、そこに意識は生じないこと、などを説きました。

 IITはまだまだ発展途上の理論ですが、今後意識のメカニズムを具体的に解明していく可能性を秘めており、大きな期待が寄せられています。

 それにしても、なんらかの物体が意識を発生させるなんていう不思議なことがありえるものでしょうか?

 非常に不思議ですが、現に意識を発生させる物体をあなたも私も持っています。

 脳です。

 もし人間の脳構造を完全に模倣した電子回路を作ることが出来れば、そこには当然、意識が発生すると思いませんか?

 もちろん、どんなに正確に脳の神経回路を再現しようとも機械(無生物)には決して私たちが感じているような意識は宿らないという意見もあります。

 専門家の間でも様々な意見があるようですが、現状では、作ってみなければ分からないとしか言えません。

 とは言え、脳というのは約1000億個ものニューロンが数兆個のシナプスを介して繋がっているという、恐ろしく複雑な神経回路を持っています。そう簡単に再現できるような代物ではありません。

 再現どころか、まだまだその複雑な神経回路の全貌は見えていません。

 しかし今、その神経回路の地図(コネクトーム)を全て解き明かそうという研究が始まっています。

 とてつもなく遠い道のりですが、やっと一歩一歩進めるレベルの観察機器、解析能力が開発されてきており、今後、さらなる観察機器の発展、そして人工知能を使った解析力が加われば、一気にその解析スピードは加速する可能性があると言われています。

 全てのコネクトームを解明した時、意識についての謎が解けるのか?それともさらなる謎に包まれるのか?その道のりの終点には何があるのか分かりませんが、とにかく一歩一歩研究を進めてもらいたいところです。

 脳を再現するには、コネクトームを知るだけでは十分ではありません。それを再現する為のマシンが必要になります。

 現在あるコンピュータでは、とても脳の全てをシミュレートすることは出来ません。

 しかしコネクトームを全て解析出来る頃には、おそらく今とは比べ物にならないぐらいのスペックを備えたコンピュータが開発されているはずです。

 今、PEZY Computing社の齊藤元章さんという方がとんでもないマシンを開発しているそうです。革命的なマシンです。

 彼が頭の中に描くマシンが本当に完成すれば、1000億個のニューロンを再現することぐらい余裕です。それどころか人間の脳を遥かに凌駕した人工脳を作ってしまう可能性をも秘めています。

 脳を電子回路で再現した時、そこに意識は生まれるのか?その壮大な実験に向かう道筋はおぼろげながら見えてきました。

 先日のAIサミットで登壇した齊藤元章さんは「本当にそこに意識が発生するのかどうか是非確かめてたい。」とおっしゃっていました。

参考「WIRED AI 2015」で日本のAIの最先端に触れてきた話

人工意識は何を思う?

 もし、人工意識が発生したとすると、それはどんなものだと思いますか?

 何の記憶もなく、何の経験もなく、ただ自分が自分であることを認識できる意識。まるで自分が何者かという記憶を喪失してしまった人間のような状態かもしれません。

 理想を言えば人間の赤ちゃんのように、ただ周りを見たり音を聞いたりするだけの段階を経て、少しずついろんなことを経験し、理解し、言葉を覚え、自分を作り上げていくのが健全な意識だと言えますが、人工意識の場合、生まれた瞬間には様々な知識を持ち、英語でも日本語でもどんな言葉でも操れる状態なんだろうと思います。

 実用面を考えるとわざわざ空っぽの状態で作って、一から言葉や知識を教えるようなことはしないでしょうから。

 しかし、記憶や経験に基づいていない言葉・知識というのはどういうものなのか?私たちには想像しがたいものです。見たことも聞いたこともないものの概念を既に知っているのですから。

 仮に言葉を既に覚えた状態で、人工意識が生まれたとしたら、その人工意識は何と言うと思いますか?

 やはり「ここはどこ?私は誰?」とベタなセリフを言うのかもしれません。

 ペッパー君のようなロボットも言葉を巧みに操ってコミュニケーションを取ることが出来ますが、彼らには(おそらく)意識はありません。自分が何を言っているのか分かっていないはずです。

 一方、人工意識は自分を自分だと認識します。自分が何を言っているのか?何を知っているのか?何を思っているのか?把握できるはずです。

 そのような人工意識は、なぜ自分はこんなにもいろんなことを知っているのか?「私」は一体何者なのか?と自問しないでしょうか?

 私達と同じように「自分は生きている」と感じるのでしょうか?

 私達と同じように、死を恐れるのでしょうか?

 果たして人工意識は何を思うのか。あと何十年後かにはその答えが分かるかも知れません。

 長生きしましょう。

 齊藤元章先生、どうか健康に気を付けて下さい。

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コメント

  • はじめまして、心身問題について調べていたらこのページにたどりつきました。
    200年前の科学者は歯車とバネをうまく組み合われば意識が作れると考えていました。いわゆる機械論です。
    しかし、それでは無理ということで、電気技術の発達にともない「脳神経の回路の電気信号が意識の源だ」と考えるようになりました。
    しかし、それもいつしかすてさられ最近は「情報を組み合わせれば意識が生まれる」という説が主流となっています。
    しかし、情報と情報を組み合わせたり、情報を情報で観測してもそこから意識がうまれるとはとてもは考えがたいです。
    「意識」とはつまるところ「魂」ではないでしょうか?

    by ひとっP 2017年1月3日 8:25 PM

  • 初めまして 人には魂があるのかどうかとゆう問題で悩んでおります 人に超自然的な霊魂などがあるとした場合 意識のハードプロブレムは解決不可能なのでしょうか? だとしたら意識のハードプロブレムを解決した場合人に超自然的な魂がないとゆうことになるのでしょうか?

    by カワムラ タクミ 2017年7月8日 4:13 PM

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