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森博嗣
「すべてがFになる」で衝撃デビューを飾った森博嗣、知ってますよね?
理系ミステリーなんて呼ばれる数々の名作を世に出している超有名な作家さんです。
そんな工学知識バリバリの森博嗣が、今から約200年後の未来を描くWシリーズと呼ばれている小説があります。
これがかなり面白いです。
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人類が手にしたモノと失ったモノ
その世界では、人類は高度に発展した科学技術によって、非常に多くのものを手に入れています。
特筆すべきはバイオテクノロジー。
なんと細胞を培養し、限りなく不純物を取り除いたクリーンな人工細胞を作ることに成功しており、それを人体に取り入れることで、超長寿を実現しています。もちろん、表皮細胞を入れ替えれば若返りも自由。
不純物がないので病気にもならないし、たとえ大怪我をしても、たとえ体の一部が欠損したとしても、心臓が止まったとしても、人工細胞で置き換えさえすれば、問題なく生き続けることができます(記憶や意識は戻らないこともある)。
事実上の不老不死を手に入れ、限りなく便利な世の中を実現する一方で、人類社会は、1つの大きな問題に直面することになります。
原因不明の不妊症です。
死ななくなった結果、生まれなくなってしまったんです。
永遠の命と引き換えに、人類は世代交代の術を失ってしまったわけです。
人類社会が手にした世界は、果たしてユートピアなのか、あるいはディストピアなのか、そんな時代背景のお話です。
人工知能と人間の差
人工細胞技術は人間の長寿化のみならず、ロボットの有機化に成功しています。
コンピュータとして発展を遂げてきた人工知能を、人工細胞によって作られた有機体に載せることで、見た目も中身も人間と区別がつかないレベルのロボット(もはやロボットとは呼べない)を生産する技術を確立します。
その人工人間はウォーカロンと呼ばれており、メーカーにより大量生産されたウォーカロンは普通に人間社会に溶け込み、人間と同じように暮らしています。
人工知能の計算能力は人間を遥かに上回ってはいるものの、ウォーカロンはあえて人間レベルの知能と道徳心、そして穏やかで非交戦的な性格になるように設定されています。
とは言え、もちろんそれぞれに個性があり、人間と同等の人権を持ち、人間と変わらない生活をしています。
この物語の主人公であるハギリ博士が研究しているのは、人間とウォーカロンを区別するための装置です。
オリジナルの人間なのか?ウォーカロンなのか?はもはや見た目や行動だけでは簡単に見分けが付かないレベルになっているわけです。
人間のように思考できる人工知能と、有機体である人工細胞からなる体を持つウォーカロンは、人間と一体どう違うのか?
その差を見分ける為の装置がもう間もなく完成するという頃に、ハギリ博士は何者かに命を狙われる、という感じでスリリングに物語は進行ます。
Wシリーズ
お察しの通り、ウォーカロンというのは、「Walk Alone」という語から来ており、Wシリーズの「W」も同様だと思います。
現時点(2017年8月)で、Wシリーズは以下の6作あります。
- 彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? Wシリーズ (講談社タイガ)
- 魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? (講談社タイガ)
- 風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? Wシリーズ (講談社タイガ)
- デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping? (講談社タイガ)
- 私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback? (講談社タイガ)
- 青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? Wシリーズ (講談社タイガ)
まだシリーズは続いているので、もちろん話は完結していませんが、一応、一冊ごとにキリの良い所で終わるようになっています。
知的好奇心をくすぐる時代背景と、スリリングなストーリー展開に見事に引き込まれ、一気に読んでしまうと思います。
人工知能に興味がある人なら、絶対、楽しく読めると思うので、ぜひ読んでみて下さい。
一作目はこちら↓