AI革命前夜

人工知能、脳科学などに関する事を語っているブログ。

人工知能 博士と助手

[言葉と概念] Pepper君は言葉を理解しているか?

[言葉と概念] Pepper君は言葉を理解しているか?
助手
博士、一体、意識って何なんすか?こないだ博士に難しいこと言われてから、よく分からなくなっちゃいましたよ。

参考:意識の証明

博士
うむ。少しは分かってきたようだな。
助手
いや、分からなくなってきたって言ってるんすよ?
博士
おまえの言う通り、意識というのはよく分からないものだ。だから、分からなくなってきたということは、むしろ意識について少し分かってきたということだ。
助手
そうなんすか?w
博士
意識とは何か?これは人類が今なお直面する謎の一つだ。
助手
不思議だなぁ。意識なんて誰にでもあるものなのによく分かっていないなんて。
博士
確かにな。・・ところで、今、巷で噂のPepper君という人型ロボットを知っているか?

助手
知ってますよ。ソフトバンクのやつっすよね?

参考:Pepper(ペッパー)販売開始 | 特集 | ロボット | ソフトバンク

博士
あのロボットは人間と会話をすることが出来るそうだが、彼は言葉を理解していると思うか?
助手
会話出来るんだったら、ある程度は理解してるんじゃないっすか?
博士
やっぱり理解していないか・・。
助手
いや、理解してるんじゃないっすかって言ったんすよ。
博士
私は、お前が「言葉を理解する」という現象を理解していないと言ってるんだ。
助手
・・今日の博士は回りくどいっすね。
博士
バカ者、私の思考はいつも最短ルートだ。お前の思考が周回遅れなだけだ。人聞き悪いことを言うな。
助手
どっちが人聞き悪いんすかw
博士
Pepper君は言葉の意味を理解しているのではなく、言葉をただの記号として処理しているだけなんだ。
助手
ただの記号?
博士
そうだ。そもそも言葉というのは概念と記号がセットになったものだ。
助手
概念と記号がセット・・?
博士
分かりやすいリアクションだな。今から分かるように説明してやろう。
助手
あ、はいw

言葉の概念

博士
お前は犬を知っているか?
助手
当たり前じゃないすか。
博士
じゃあ、犬ってなんだ?
助手
犬って言ったらあれですよ、ワンワン吠えて毛がふさふさの動物ですよ。
博士
それだけか?
助手
いや、それだけってことないっすけど、そんなの言葉で説明しきれなくないっすか?
博士
そうだな。それが概念だ。概念というのは、とても言葉では説明できないぐらい曖昧で大雑把なものだ。心配しなくてもお前がバカだから犬を説明出来ないのではない。
助手
別に心配してないっすからw
博士
お前の言葉を借りるなら、「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物」という概念が脳内に存在し、そこに我々は「犬」という言葉を当てはめている。
助手
はぁ。
博士
アメリカ人なら、「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物」という概念に、何と言う言葉を当てはめている?
助手
dog?
博士
そうだ。英語は得意なようだな。
助手
いや、それほどでもw
博士
まず言葉ではなく概念が在り、そこに記号としての言葉を当てはめている。日本語だろうが英語だろうが同じだ。
助手
国によって記号は違っても、概念は共通なんすね。
博士
そうだ。いい着眼点だ。犬もdogも同じ一つの概念を参照していると言える。
助手
そうか!概念ってのは言葉じゃないんすね!
博士
どうした?今日は冴えてるじゃないか。
助手
「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物」ってのは俺が持ってる犬の概念を無理やり言語化したものなんすね!
博士
その通り。概念というのは元来、言葉ではない。言わばイメージだ。そのイメージのことを指し示す記号が日本語なら「犬」、英語なら「dog」ということだ。
助手
そうかぁ。「犬」ってのは犬の概念を指し示す記号なんすね。
博士
そう。お前の脳内に犬の概念が在るからこそ、お前は「犬」という記号が何を指しているかが分かるんだ。
助手
Pepper君の頭の中には犬の概念はないんすね。
博士
しかし、Pepper君に「犬とは何?」と聞いて「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物のことです。」と答えさせることは出来る。逆に、「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物は何?」と聞いて「犬」と答えさせることも出来る。
助手
え?!概念がないのに?・・そうか!Pepper君は記号と記号を結びつけているんすね!
博士
そういうことだ。Pepper君は「犬」という記号と「ワンワン吠えて毛がふさふさの動物」という記号をイコールで結び付けて記憶しているだけなんだ。
助手
ってことは、Pepper君は「犬」が何なのか全く分かってないってことっすね。
博士
記号としてならいくらでも詳細に記憶することは出来るがな。wikipediaのように。
助手
どんな犬種があるとか、体長何cmだとかそういうデータとしてならいくらでも記憶させることは出来るんすね。「ワンワン吠える」とかそんな低レベルな言葉じゃなくw
博士
しかし、世界中の犬に関する詳細なデータをインプットしたとしても、概念の獲得には至らない。たくさん記号を記憶しているだけだ。
助手
けどもし犬に関する完璧なデータがあればそれは、概念とは呼べないんすかね?
博士
残念ながら無理だ。記号というのは0と1の羅列で表現できるが、概念というのは単純に0や1を積み重ねて表現出来るほどカッチリしたものではない。もっと曖昧なものだ。
助手
ふーん、脳ってすごいんすね。どんなに計算の速い機械でも俺の脳には及ばないってことっすねw 俺には概念が分かる!
博士
そうだ。ただ言語化する能力が著しく低レベルだっただけだ。
助手
ちょ、せっかく賢くなった気でいたのにw

概念を獲得する

博士
お前の脳内にはなぜ「犬の概念」なんてのがあると思う?
助手
俺の脳内に「犬の概念」がある理由??生まれつき持ってたんすかね?w
博士
違う。お前は学習したんだ。
助手
「犬の概念」なんて学校で習ったかな?
博士
学校で習ったのではない。絵本やテレビで犬を見たり、そして実物の犬を見たり、触ったり、鳴き声を聞いたり、臭いを嗅いだりしながら、お前は学習したんだ。
助手
へー、赤ん坊の時に?覚えてないなぁ。
博士
何も知らない赤ん坊は、五感をフル稼働して外界の情報を獲得していく。
助手
ぎゃーぎゃー泣いてるだけじゃないんすねw
博士
外界の情報をどんどん脳にインプットしながら、外界に存在するいろんなモノについて、抽象化し共通点を見出してカテゴライズしていくんだ。
助手
抽象化し共通点を見出してカテゴライズ?赤ちゃんって凄いっすねw
博士
まあ簡単に言うと、人間のことを人間だと認識したり、石ころのことを石ころだと認識したり、犬のことを犬だと認識したり、といった作業だ。
助手
けど赤ちゃんはまだ「人間」や「石ころ」や「犬」って言葉は分からないんすよね?
博士
もちろんこの時点ではまだ言葉、すなわち記号は当てはめてはいない。ただ一括りに出来そうなモノを見つけていく作業だ。
助手
一括りに?グループ分けみたいなもんすね。
博士
例えば、tsumikidogは同じモノではないと認識する。片方は勝手に動いたりしないし、片方は勝手に暴れまわっているからな。
助手
積み木と犬は確かに違うモノっすねw
博士
それに対して、dogcatは同じモノだと認識する。
助手
犬と猫が?
博士
大雑把にな。犬と積み木よりは、犬と猫の方が近いだろう?
助手
まあ、確かに似てるっちゃ似てますね。
博士
そうやって、いろんなモノを見るうちになんとなく共通点を見つけながらカテゴライズしてくんだ。もちろん、そのうちdogcatは鳴き声も違うし、歩き方も微妙に違うことに気づく。
助手
なるほど。少しずつ分けていくんすね。
博士
もっとサンプルが増えてくると、dogdog2は、どうやら同じ仲間だと認識する。
助手
ワンワン吠えて毛がふさふさの動物!
博士
そうだ。犬の概念がおぼろげながら脳内に出来始める。
助手
けど一括りに犬って言っても、大きさも色も鳴き声もみんな微妙に違うのに、よく同じ仲間だって分かるもんなんすね?
博士
そうだな。顔も体も鳴き声ももちろん個体差があるし、犬種も様々だ。一匹として全く同じ犬は存在しない。にも関わらず同じ「犬」という括りとして認識できる。それが我々の脳の凄いところだ。
助手
そもそも犬の鳴き声なんて実際、「ワンワン」じゃないっすよねw
博士
多くのサンプルを見たり聞いたりしてるうちに、絶妙な曖昧さを含みながら、しかも時には例外をも含みながら、そのモノが持つ抽象的かつ一般的なイメージを、脳は作り上げてしまうんだ。
助手
少しずつ概念が出来あがっていくんすね。・・例外ってどういうことっすか?
博士
どう聞いても「ワンワン」には聞こえない鳴き声の犬が居ても、それは例外として処理される。
助手
あ、そうか。鳴き声が変だから、こいつは犬じゃない!とはならないんすね?
博士
「鳴き声がおかしな犬」と認識することが出来る。つまり概念というものには、例外をある程度許容してしまう柔軟さがあるんだ。
助手
きっちり線を引くんじゃなくて、曖昧な状態だからこそ柔軟性があるんすね。
博士
そう。それが、0と1の羅列しか認識出来ない機械には、どうしても出来なかったことなんだ。
助手
Pepper君もまだまだっすねw
博士
確かにPepper君は、まだまだだ。
助手
・・え?!「Pepper君は」ってどういうことっすか?
博士
そういうことだ。いよいよ概念を理解する機械が現れ始めたんだ。
助手
えええーーー?!何すかそれ?!

概念を獲得し初めた人工知能

博士
先日、Googleが開発した最新の人工知能が猫の概念を学習したというニュースが入ってきた。
Screenshot of www.rbbtoday.com

Google、脳のシミュレーションで成果……猫を認識 | RBB TODAY

同研究所は、人間の脳の働きをシミュレーションするために大規模なネットワークを用いる新たの方法を開発。このシステムにYouTubeの動画を1週間見せつづけたところ、猫がどういうものかを学習し、猫を認識できるようになったという。

助手
猫がどういうものかを学習?って、機械が猫の概念を獲得したってことっすか?!
博士
そうだ。しかも自力でだ。人間が猫の特徴をプログラミングしたのではない。機械が勝手に猫の画像を見て、”猫らしさ”を習得したんだ。
助手
自力で?!
博士
まあしかし、この機械が獲得したのは、猫の映像、つまり見た目だけの概念ではあるがな。手触りや鳴き声、臭い、そういった視覚以外の体験から得られる概念は完全に抜け落ちてはいる。
助手
いや、それにしても、何がどうなって・・!
博士
ま、今日のところはこの辺で終わりにしよう。
助手
ちょ、なんで機械が概念なんて難しいこと分かるんすか!機械が扱えるのは記号だけじゃなかったんすか!

博士
私はもう疲れた。どうしても知りたかったら、この本でも読んでおきなさい。kindleなら700円ほどだ。

博士
では、みなさんご機嫌よう。
助手
ちょ、博士、どさくさに紛れて何、商売してんすか!w

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